女の浮気

 

 

 

夜半、電話が鳴った。

 

故郷に住む後輩からだった。

 

まだ私が地元で暮らしていた頃、

 

厄介な先輩に、嫌な顔ひとつせず、付き合ってくれた人だ。

 

 

ーーーーしかし、彼のほうから電話とは、珍しい。

 

 

「どうしたんだ」

 

「夜分にすみません」

 

 

内容を聞くと

 

女と別離した話だった。

 

彼いわく、恋人から浮気をされたらしい。

 

 

泣いたり、取り乱しているのは電話越しでもわかった。

 

「そうか、まさかあの子が、な」

 

「自分も信じられないです、腹が立ちます、どうしたらいいですか」

 

まったく…、

 

私はいつから失恋相談所になったんだ、と思うことがよくある。

 

人よりすこし文章が書けるからと言って(思ってないが)、

 

まるで私が、男女の厄介ごとの解決策を知っている、と思い込んでいる人がいるが、

 

そんなことはない。

 

ただ、大人の男としてどういう振る舞いをしたら少しはマシになるか、

 

ある程度なら人に伝えられる。

 

 

 

「彼女は君に謝ったのか」

 

「はい、でもどうしても許せなくて」

 

 

「許してあげなさい」

 

「えっ」

 

 

「彼女は、君の元に帰ってきて謝っとるんだろう。

そりゃ“浮気”だ、いっときの気の迷いだ。

それが今回たまたま君の目に入ったんだ。

よかったじゃないか、“本気”じゃなくて。

本気なら、これを機に君の元には二度と帰ってこなかったはずだ」

 

 

 

 

 

「はあ」

 

 

むかし、付き合っていた女が、私に言った。

 

『女の子は浮気なんてしないの、ほかの男にいっちゃうのは、それは浮気じゃなくて本気なの。それかただの気の迷いよ。目移りみたいなもん』

 

そう言って、彼女は不良男たちと遊びに出かけた。

 

手前のことしか考えない、ずいぶんな女だった。

 

私は男だから、女性がなにを考えとるのかなんてのは分からない。

 

ただ女性である彼女がそう言うのだから、きっとそうなんだろう、と思うことにした。

 

 

もちろん、青二才で若かった当時の私は、

 

言っている意味がよくわからなくて憤怒したし、

 

やるせない気持ちになった。

 

 

しかし同時に、自分を見つめなおせば、

 

つまらない点ばかりで、

そりゃあ、彼女も他の艶男にうつつを抜かしたくもなるよナ、と反省した。

 

 

 

 

女は浮気をしない、本気だ。

 

自分の元に帰ってきたのなら、きっと気の迷いだったんだ。

 

すべて男がそうさせたんだ。

 

 

 

淋しい想いをさせてなかったか、

 

辛いことをさせてなかったか、

 

器は小さくなかったか、

 

大切にできていたか。

 

 

これが決して正しい答えではなくても、

 

そう考えることにすれば

 

すこしは自分の度量のちいささを直せる。

 

 

生きるとはこうした理不尽さの連続であり、

 

傷つかない人生などない。

 

 

人は皆、許せないことを抱えて生きているんだ。

 

 

 

 

女性と付き合うってのことは、

 

相手のすべてを受け入れるということだからナ。

 

 

 

「今は踏ん張って、男を磨きなさい。」

 

 

私の言葉は、いま彼が知りたかった答えではなかったかもしれないが、

 

自分が何者だったのか見つめ直せるイイ機会だと思えば

 

自分など、たかが知れてることに気づく。

 

 

 

 

 

あ、

 

 

あと、いっときの気の迷いってのは

 

 

女の目には、時折、オオカミが通り過ぎることがあるから

 

 

放っといて、元に戻ったら

 

 

今までどおりに暮らせばイイんです。

 

 

世間ではよくあることらしいよ。

 

 

 

 

 

しかし、男って、つらいナ…。

 

 

 

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