男と女

 

 

 

東京の満員電車に乗った。

 

あれは本当に疲れるものだ。

 

 

私の場合、少し背丈がある分まだマシだが

 

女、子どもは大丈夫か、と心配になる。

 

 

その日、私が満員電車に遭遇したときは

 

ちょうど胸元にOLの頭部が迫ってくるので

 

とても難儀(なんぎ)していた。

 

 

駅によってドドーッと乗客が入ってくる時があり、

 

押されたり引かれたりしているうちに、

 

あれ?私の腕は、足はどこに行ったんだ?

 

なんて状態もある。

 

 

勤め人は、毎朝これをやらねばならんのかと考えると

 

憂鬱になる。

 

 

 

 

ーーーオイオイ、どうしたんだ。

 

電車が原宿から渋谷駅へ向かっているとき

 

私は、目の前のOLがすすり泣いているのに気づいた。

 

 

たしかに満員電車は耐えがたいが、

 

大人なんだし(三十代くらいだった)

 

なにも泣くようなことじゃないだろう、

 

と眉をひそめたが、

 

 

やがて女が小刻みに震えだしたので

 

具合でも良くないのか、と心配になった。

 

 

 

 

「大丈夫ですか…痴漢ですよね。痴漢です!誰か!痴漢です」

 

そう叫んだのは、私ではなく、泣いている女でもなく、

 

近くにいたオバさんだった。

 

 

 

OLの背後に目をやると、

 

帽子を目深に被った小柄の男が、

 

顔を引きつらせているのが、

 

着けているマスクの上からでも分かった。

 

 

たしかに、男の片手は私からは隠れていて見えなかった。

 

痴漢か、こういう輩は殴りつけなきゃダメだ。

 

 

 

「痴漢だと?次の駅で引きずり降ろそう」

 

「逃げ切れると思うなよ」

 

 

乗客していた男衆の大半で

 

痴漢男を捕まえよう、という雰囲気が車内に広がった。

 

 

しかし、周りを見渡すと

 

なぜか皆の視線は私にあった。

 

 

 

ーーー待て、私じゃない。おい、オバさん、何とか言ってくれ。

 

 

緊張感に似た沈黙に包まれた電車は

 

徐々に速度を落として停車し、

 

大きなため息をついたかと思うと、

 

渋谷駅で扉を開いた。

 

 

 

と同時に、

 

 

帽子の男が、人を押しのけながら勢いよく車内から飛び出した。

 

 

車内がどよめいた。

 

 

私もとっさに電車から飛び降り、

 

男の首根っこを辛うじて捕らえた。

 

 

ーーー待ってくれ。あんたが逃げれば私が厄介ごとに巻き込まれそうな気がするんだ。

 

 

 

その光景を見たほかの乗客が、

 

ようやく気づき、ハッとなったように加勢してくれて、

 

痴漢男を羽交い締めにし、

 

観念したところを駅員に引き渡した。

 

 

私はなんだか疲弊してしまい、足早にその場から立ち去った。

 

 

ーーーーもう、電車は、こりごりだ。

 

 

 

 

 

 

 

よく、男女平等という言葉を耳にするが、

 

私は心の何処かで、男と女が同じなわけないだろう、と思っている。

 

 

体力、力の差は当然あるし、

 

女の方は金だってかかる。

 

明らかに社会で生き辛いのは男より女の方だ。

 

 

根っこの部分まで辿れば、

 

女性は月に一度 体調を崩す。

 

 

男に体感はできないが、あれは見ているこちらも辛くなる。

 

 

男は多少 熱っぽくても働ける。

 

 

 

もはや男女の違いはフェミニズムみたいなものでは埋められないだろう。

 

 

 

 

だからせめて、電車くらいは

 

女性専用車両とは言わずに、

 

“女性専用電車”の時間帯をこしらえてやりゃイイんじゃないかな、と私は思う。

 

 

 

その分、男が早起きしなくちゃならないし、

 

帰りだって遅くなるかもしれない。

 

イイじゃないか。

 

 

早朝に仕事に繰り出して、

 

遅くまで仕事。

 

 

「この時間帯は、女が乗る電車か。しかたない、一杯ひっかけにいくか」

 

 

となれば、景気も良くなる。

 

 

果ては、

 

タクシーを使うようになり、

 

さらに、車を欲するようになった男達は

 

否が応でも稼がないといけないし、

 

 

少しは踏ん張って仕事をするようになるんじゃないかナ。

 

 

 

 

 

いつの時代も、男女の問題を取り上げるのは難しいが、

 

 

男は仕事ができてこそ男だし

 

女だけは時間に遅れる権利があるから

 

やはり、平等は困難じゃないか。

 

 

 

 

 

 

あ、

 

 

 

お会計のときに

 

奢る、とか割り勘だとか、

 

 

男女平等の話を織り交ぜて

 

よく議論になるが、

 

 

あれに男女の話は一切関係ないから。

 

 

 

 

 

コメントを残す